プリント基板総合メーカー|RITAエレクトロニクス株式会社 > 事例紹介 > 高速DRAMの同時動作シミュレーション
高速DRAM伝送において同時動作を考慮した高精度なシミュレーションを実施したい。
高速DRAMを搭載するプリント基板では、設計段階にてシミュレーションを行うことが一般的で、図1のような信号品質検証方法があります。現在、デバイスのパッケージには集中定数モデル、プリント基板には特性インピーダンスと遅延時間で表現した伝送線路モデルを使用してますが、伝送速度の高速化に伴い、電磁界シミュレーションにて抽出したSパラメータを用いた高精度な同時動作シミュレーションが必要となってきています。
図1 信号品質(SI)検証の方法
この課題を解決するため、弊社では、電磁界シミュレータと回路シミュレータを用いた精度重視の同時動作シミュレーションを提供しており、その事例を紹介します。
メモリコントローラ(FPGA)とDDR4-SDRAMが1対5で接続されたプリント基板があります。図2はシミュレーション方法の概要です。まず、電磁界シミュレータにてパターン設計データに基づいた伝送線路(全信号)のSパラメータを抽出します。次に、回路シミュレータにて、デバイスモデル(IBIS)と抽出したSパラメータ、外部終端抵抗を接続し、複数信号による同時動作シミュレーションを実施します。なお、本例ではデバイスパッケージのSパラメータが入手できなかったため、代替としてIBIS内の集中定数モデルを使用しました。
図2 シミュレーション方法
また、弊社では、電磁界シミュレーションによるSパラメータの抽出方法を最適化し、回路シミュレータ上でのIBISモデルとSパラメータの接続を自動化しました。これにより、短時間でのシミュレーションのセットアップを実現しています。
この基板はGNDベタパターンの一部に欠損があり、実測においてアドレス・コマンド信号の波形品質が劣化する現象が確認されています。現在の解析速度重視の伝送線路・回路シミュレーションの場合、この波形劣化を再現できませんでしたが、精度重視の電磁界・回路シミュレーション(同時動作シミュレーション)を用いることで、近接した信号の動作状態に応じた波形品質の劣化が再現し、より高精度な解析結果が得られました(図3)。
図3 実測とシミュレーションの精度比較例
また、HyperLynx(Siemens)の回路シミュレータによる同時動作を考慮したタイミング検証の解析レポート例を図4に示します。結果はJEDEC規格に基づく各項目で合否や電圧・タイミングマージンを表形式で定量的に確認できます。さらに、タイミングのワーストケースを波形・アイダイアグラムで可視化することで、信号品質を直感的に把握できます。これらの評価結果に基づき、規格に適合しない項目やマージン不足が確認された場合には、その要因を把握し迅速にパターン修正を実施いたします。
図4 シミュレーション結果例
高速DRAMの高精度な同時動作シミュレーションを実現
電磁界シミュレーションによる伝送線路のSパラメータを用いた波形シミュレーションにより、プリント基板のパターン欠損や同時動作の影響を考慮したより高精度な信号品質検証が可能になりました。
また、JEDEC規格に準拠した評価レポートにより、パターン設計の妥当性が確認できます。
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