技術資料

フローティング層が高速信号伝送に及ぼす影響

1. はじめに

画像情報等の大容量データを高速に伝えるため、信号処理用LSIの多ピン化が進み、これをプリント配線板で引き出すため、基板の多層化が進んでいる。ここで、インピーダンスコントロールや信号層間でのクロストークを防止するため、信号層の間にグラウンドや電源のべたプレーンを配置する事が多用されている。ここで、LSIの電源やグラウンドの端子とべたプレーンとの接続方法を誤ってしまうと、べたプレーンがフローティング層となる事があり、リターンパス不連続やインピーダンス・ミスマッチが起こり、高速信号伝送に悪影響を及ぼす可能性があるが、実験的に検証した例は少ない。

我々は、フローティング層が高速信号伝送に及ぼす影響を明らかにするため、表裏が信号層で内層2層がべたプレーンの4層プリント配線板にて、片方のべたプレーンが浮いた状態の仕様を作成のうえ、高速伝送特性を実験したので、結果を報告する。

2. 試作回路

テスト基板の概要を図1に示す。板厚1.6mm、一般的なFR-4材料を用いた4層プリント配線板の外層に、全長250mmの50Ωマイクロストリップを配置した。この誘電体厚みは0.22mm、線幅は0.44mm、ソルダレジスト被覆ありである。
配線の両端には、信号入出力用にSMAコネクタを実装した。表面層(第1層とよぶ)に近いべたプレーン(すなわち第2層)は、SMAコネクタのグラウンドピンに接続することによって、グラウンド電位とした。一方、残りの第3層のべたプレーンについてはコネクタと未接続にすることによって、浮いた状態とした。
マイクロストリップの仕様は、線長250mmの中点にスルーホールを設け、これで第1層と第4層それぞれに配置された125mmの配線を接続した。この信号用ビアの近傍には2つのプレーンを接続するリターンパス用のビアを配置しないことによって、信号用スルーホールの部分でリターンパスが分断される仕様とした。
そして、第2層と第3層のべたプレーンの大きさは基板外形寸法とほぼ同じで、基板長手と短手方向のそれぞれに伸ばした仕様、具体的には図1において、Lx=2~47mm、Ly=3~28mm に変化させた基板を製作した。

図1 テスト基板のパターン図(上から第1~4層)

図1 テスト基板のパターン図(上から第1~4層)

3. 結果と考察

伝送特性は、TDR とネットワークアナライザーで評価した。

 

3.1 特性インピーダンス

まず、べたプレーン寸法を基板長手方向(Lx)、短手方向(Ly)ともに変化させたときのポート1からのTDRの測定結果を図2に示す。ポート1に接続する配線のリターンパスは第2層であり、この電位はグラウンドのため、特性インピーダンスは所望の約50Ωになっている。スルーホールの位置でインピーダンスが上がり、べたプレーンの寸法が大きくなるほどスルーホール以降の特性インピーダンスは元の50Ωに近づく結果となった

図2 Lx,Ly変化とポート1のTDR

図2 Lx,Ly変化とポート1のTDR

 

続いて、同じ基板でポート2からTDRを測定した結果が図3である。画面中央のスルーホールの位置まで、先のポート1からの測定結果と比べると特性インピーダンスが高くなっている。ポート2に接続する配線のリターンパスはフローティング状態の第3層であるが、べたプレーンの寸法が大きくなるほど配線のインピーダンスが50Ωに近づくことが分かった。一方、基板の短手方向は Ly=3mm 一定で、長手方向の寸法を変化させたときのポート1、2からの TDR をそれぞれ図4,5に示す。前述の短手方向(Ly)を拡大したときのような改善効果は見られなかった。

図3 Lx,Ly変化とポート2のTDR

図3 Lx,Ly変化とポート2のTDR

 

図4 Ly=3mm固定、Lx変化とTDR(ポート1)

図4 Ly=3mm固定、Lx変化とTDR(ポート1)

 

図5 Ly=3mm固定、Lx変化とTDR(ポート2)

図5 Ly=3mm固定、Lx変化とTDR(ポート2)

 

以上より、信号配線内のビアによってリターンパス不連続が生じた場合、フローティング層に隣接ずる配線の特性インピーダンスが高くなることがあるが、べたプレーンが大きければ、リターン電流相当分の電荷移動が起こり、結果として特性インピーダンスが元の値に近づいたと考えられる。

 

3.2 Sパラメーター

前項に対応して、べたプレーン寸法を基板長手方向(Lx)、短手方向(Ly)ともに変化させたときの S21 を図6に示す。そして、基板の短手方向は Ly=3mm 一定で、長手方向の寸法を変化させたときの S21 が図7である。べたプレーンが大きくなるほど、S21 ディップが低減されることが分かる。

 

図6 Lx,Ly変化とS21

図6 Lx,Ly変化とS21

 

図7 Ly=3mm一定、Lx変化とS21

図7 Ly=3mm一定、Lx変化とS21

4.結論

表裏が信号層で内層2層がべたプレーンの4層プリント配線板において、べたプレーンの1層が浮いた状態の場合、このフローティング層がリターンパスとなる配線では、所望の特性インピーダンスが得られず、かつ周期的に S21 ディップが発生することが分かった。

したがって、多層プリント配線板のパターン設計においては、信号伝送に関与する部分のべたプレーンが浮かないようにする必要がある。

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